ハンター試験1日目を終了し、飛行船をうろついていた時である。
携帯が振動し、着信を告げる。
表示を見ればクロロだ。
丁度回りには誰もいない。オレは壁にもたれかかりながら、電話に出た。
「久しぶり、クロロ」
「今から出てこられるか? 頼みたいこともある、メシにでもいくぞ」
年末は忙しいとあらかじめ連絡を入れておいたので、数ヶ月ぶりに聞く声は元気そうだ。
「あー、ごめん。無理」
「なんだ出かけているのか? 珍しいな」
「ちょっと長くなるかな」
年末に急遽試験を受けることになったのもあって、クロロには試験に行くとは伝えていない。
普段のオレは仕事がなかったら家に居るので、誘えば9割は出てくる。だからこそ、彼は珍しいというのだ。
「年が明ければ、暇になるとか言っていなかったか?」
「オレでも予定はかわるんだ! プロハンターライセンスを取って来いって言われたから、ちょっと試験受けに来ているところ」
「そうか。変態に気をつけろよ」
……なんで、変態?
「体に気をつけろとか、怪我するなとか、無理するなとかじゃないの!?」
「そっちは心配する要素がないんでな」
ヒソカ。君は一体、旅団の中で何をしているのさ!
クロロからの電話を切った後、10分とたたないうちに、また着信があった。
このタイミングでかかってくる。
それで、誰からの着信かがすぐわかった。
「らーくーるー。聞いたよ。ハンター試験受けに行ってるんだって? 確かにあれ、あると便利だからな。
でもさ、変態と一緒の期にわざわざ行くなんて、物好きだよねー。
あ、でもあまり心配していないよ。君、青い果実って感じじゃないからね」
予想のとおり、受話器の先からはシャルナークの声。
クロロと行動を一緒にしており、聞いたのだろう。オレからシャルナークには試験を受けることは伝えていないのだから。
「嫌味の電話ならお断りします」
「やだな、激励の電話と言ってくれよ。でもこうなるって分かっていたらオレも行ったのに! 変態から逃げ回るラクルの姿面白そうだよね」
なんで逃げ回るって確定!? いや、逃げ回りたくはあるけど、一応同盟組んでいるから、逃げてはいない。少なくとも、見た目では!
しかし同盟組んでいると言ったら、更に何を言われるか分からない。シャルナークには余計な情報を与えてはいけない。すでにオレはそれをイヤというほど学んでいる。
「っていうか、どう考えても激励の電話に聞こえないし! っていうか、シャルすでにライセンス持っているだろ」
「問題はそこなんだよね。さすがのオレもハンター協会のデータを改竄できないし。だからさ、こういうのはどう? ノブナガやウヴォーあたりに行かせてリアルタイム実況!!!」
楽しそうなシャルナークの言葉に、オレはつい想像してしまう。
ヒソカや、ノブナガとウヴォーが暴れまわるハンター試験! もちろん死屍累々。オレまで被害うけまくり。
それをモニター越しにみて、クロロは苦笑し、シャルナークは馬鹿笑い。
そんな可能性を考えてオレはぞっとする。
「やめろよそれ! 史上最悪のハンター試験が確定するじゃないか」
特に他意はなかったけど、旅団のやつらにハンター試験を受けるって言ってこなくて良かった。
オレはほっと胸をなでおろした。
その後、気がついたらメールが1通きていた。
『よかったな。比較的平和なハンター試験で。オレとしては、シャルナークの提案も面白そうだと思ったから残念だ』
クロロ……。
『全力で断る!』
送り返した先で、クロロが笑っているのは容易に想像がついた。